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林芙美子文学碑
  苓北町富岡 岡野屋旅館

旅に寝て
のびのびと見る
枕かな


  林芙美子


 

天草灘」より抜粋

「私は、暫く、呆んやりと窓を見つめてゐた。鉛色の水平線が、窓の外で高くなったり、低くなったりしてゐる。
 「天草は、おはじめてですか?」
彼女が聞いた。
「いいえ、もう十一ニ年前でしたが、一度来た事があります。富岡の松木さんと云う雲丹屋さんで、美味しい雲丹を買った事がありました」
「今夜は富岡でお泊りですか」






 「天草灘」

 放浪作家、林芙美子(1903.12.31-1951.6.28)は、晩年の昭和25年に天草を訪れたという。

 長崎で五泊し、茂木から汽船に乗り富岡へ上陸した。この小説は短編であるが、長崎の旅館でハンドバッグと時計の盗難にあった事。茂木-富岡航路の汽船の様子。富岡の岡野屋旅館の様子などが書かれている。
 汽船では、人懐っこい玉子売りの女性との交流、旅館では目の見えない女将との交流などが生き生きと描かれている。
 
 
 ただし、この「旅に寝て のびのびと見る 枕かな」の句は、天草でつくられたものではなく、徳島の阿波地田を旅したものという。(拓本紀行 天草の文学碑 能 暘石編 より)

題字は壺井栄の揮毫という

「天草灘」の一部 雑誌「文芸」昭和27年10月号より 

 林芙美子 Wikipedia